さて、動物愛護についてですが、本年の6月議会では、その後の推移を見守るためにあえて現状を伝え、要望といたしましたが、今回は改めて質問といたします。
まず、船橋市の動物愛護行政についてですが、世界的に動物愛護の気風が高まる中、我が国でも犬猫の殺処分ゼロを目指す自治体が近年増え続けております。船橋市においても、「人と動物との調和のとれた共生社会の実現」を目指すため、船橋市犬猫の飼養・管理に関するガイドラインを令和3年7月1日に施行いたしました。
また、所有者のいない猫についても、調和の取れた共生社会の実現のため、市としてTNR活動への無料手術の実施や地域猫活動の啓発を行い、所有者の判明しない猫の引取りや殺処分の減少に努めていることは一定の評価をするものであります。
しかしながら、本市においては、県内他市と比較しても所有者の判明しない成猫の引取りは年々増加傾向にあり、令和元年度には29頭、令和2年度には64頭、令和3年度には66頭と引取り数が大幅に増加していることがデータから分かるものであります。
所有者の判明しない成猫の引取り申請に関して、引取り申請を受けた自治体はそれを拒否できるという文言が令和元年改正された、動物の愛護及び管理に関する法律第35条に明記されました。
引取りを拒否できる要件として、周辺の生活環境が損なわれる事態が生じるおそれがないと認められる場合とあります。周辺の生活環境が損なわれる事態とは、動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第12条にあるように、該当するものが、周辺地域の住民の日常生活に著しい支障を及ぼしていると認められる事態であって、かつ、当該支障が、複数の周辺住民から都道府県知事に対する苦情の申出により、周辺住民の間で共通の認識となっていると認められる事態及び周辺住民の日常生活に著しい支障を及ぼしているとして特別の事情があると認められる事態とするとあります。
そして、環境省がまとめた令和元年改正動物の愛護及び管理に関する法律の施行に関するQ&Aの中の8-2の項には、施行規則第12条の周辺住民の日常生活に著しい支障を及ぼしているものとして、特別の事情があると認められる事態は具体的にどのような事態かとの問いに対し、個人の健康被害が生じてる事態を想定しています。この場合、診断書等により健康被害と動物の飼養・管理による影響との因果関係が証明されるなど、著しい支障があることを明確に判断できることが望ましいのですが、証明が困難であることも想定されるため、被害を受けている方の事情を丁寧に聴取しながらご判断くださいとあります。一口に、日常生活に著しい支障といっても、その感覚には大きな個人差があり、引取りすべき事案であるかどうかの判断が簡単にはできないものであります。
したがって、その被害状況が複数住民の共通の認識であることや、当該地域住民からの複数の苦情、そして、個人の健康被害が所有者のいない猫がそこに生息していることを起因としていることとした診断書などによる証明が望ましいと環境省が明文化しているのだと思います。
(質問)
そこで質問いたしますが、動物愛護センターの職員は訴えのあった全ての地域、または町会に実際に足を運び、町会や周辺住民への聞き込みなどを行っているのか。また、複数の住民による訴えがあったのか。そして、それらの一連のやり取りを記録した文書、あるいは帳簿が存在するのかも併せてお答えください。
(答弁)保健所理事
お答えいたします。
まず、ご質問の根拠となる法令等の関係性の解釈ですが、動物の愛護及び管理に関する法律施行規則第12条及び令和元年改正動物愛護管理法の施行に関するQ&Aの中の8-2の項は、動物の愛護及び管理に関わる法律第25条第1項の周辺の生活環境の保全に係る措置に関する記述であり、法第35条第3項に直接適用されるものではないと考えております。
また、環境省は、議員ご案内のQ&Aの中の10-3で、法第35条第3項と法第25条第1項とは、それぞれの規定の目的や表現が異なることを前提に、法第35条第3項の所有者の判明しない犬及び猫の引取りの運用に当たっては、法第25条第1項の環境省令で定める事態を規定した施行規則第12条の内容も適宜参照するよう見解を示しておりますが、あくまで参照であると理解しており、診断書等の取得や周辺住民への聞き取りは必須でないと考えております。
このことから、議員ご質問の町会や周辺住民への聞き取りは必ずしも行っておりませんが、現地の状況等確認が必要な場合は必要に応じて行っております。また、複数の住民からの訴えは件数的には少なく、個人からの申出が多数を占めている状況でございます。
次に、引取りに係る経緯を記載した文書としては、引取りを求める方に提出していただく引取り申請書があり、引取りを求める理由を記載いただいておりますが、今後は施行規則第12条に示している環境被害の内容をより一層意識しながら詳細に聞き取りを行い、丁寧に記録するよう努めてまいります。
以上でございます。
(質問)
環境省が定めた施行規則に則することもなく、診断書などの証明や周辺住民への聞き込みが必須でないと。それらを怠っているようでは、所有者の判明しない成猫の引取りに対して善意の多くの市民からの理解は得られないものと強く抗議いたします。
船橋市では、地域猫活動を行う場合やTNRの無料手術を申請する場合にも、町会からの申請や合意を必要としていますので、所有者の判明しない猫の引取りに際しても地域の合意を必須としなければ、所有者のいない猫にまつわる問題の解決策としてバランスが取れておらず、つまり不十分であり、市民の理解を得ることは困難だと思われます。所有者の判明しない成猫の引取りは、殺処分につながる懸念があるため、環境省が定めた施行規則に沿った事業を行うよう、今後も粘り強く抗議、要望をしてまいりたいと思います。
次に、動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針、令和2年環境省告示によれば、殺処分を透明性を持って戦略的に減らす必要があると示しています。もう一度言いますよ。殺処分を透明性を持って戦略的に減らす必要があると言ってるのです。単に所有者の判明しない成猫の引取りをもって安易に殺処分の増加につなげないためにも、動物愛護指導センターは引取り申請のあった地域に足を運び、周辺住民もしくは町会自治会に地域猫活動の啓発や実施を積極的に促すことが必要だということを強く申し上げたいと思います。
さらには、安易な引取りが行われていないか、もっと行うべき施策があるのではないか等々の検討もすべきであり、成熟した文化的社会においては殺処分の減少や廃止は、今や世界の潮流と言っても過言ではないものであります。
しかしながら、本市における所有者の判明しない成猫の引取り数は増加の一途をたどり、殺処分数も令和元年には13頭、2年には28頭、3年には18頭と極めて不名誉な結果となっております。比較対象として、政令指定都市である千葉市や中核市である柏市は、所有者のいない成猫の引取りを一切行っておらず、結果として殺処分も全くないというわけです。殺処分をしてるのは本県では船橋市だけであります。
また、本市においては、所有者のいない猫の不妊去勢手術が施された猫の印とされる耳にV字のカットのある猫も引取りの対象にしていると聞いておりますが、地域猫活動が地域の理解により行われ、地域住民の多くが認めている現場の猫であるかもしれないわけです。
市は所有者不明の猫を引き取った後、飼い主がいないかどうかの公示を行うわけですが、外に生息している地域猫は数日間も姿を見せないこともあり、まさかセンターに引き取られているとも知らず、公示期間の満了を迎えてしまい、殺処分されてしまうこともあると容易に想像できます。
毎日世話をしていた地域住民は、猫が処分されていることも知らず、いなくなった猫を探すような日々を送ることでしょう。そのような不幸な事態を防ぐためにも、所有者の判明しない猫の引取りには慎重かつ厳密な基準があって当然のことと思います。
そこでお尋ねいたしますが、その引取りを判断する基準はどのようなものかお答えください。
(答弁)保健所理事
お答えいたします。
所有者の判明しない猫の引取りをその拾得者から求められた場合は、必要に応じて引取りを求める方に十分な聞き取りを行い、引取りを求める猫の所有者が判明しないこと、周辺に生活環境の保全上の支障が生じていることを確認し、法第35条第3項の規定する周辺の生活環境が損なわれている事態が生じるおそれがないと認められる場合に当てはまらない場合は引取りの求めに応じているものでございます。
以上でございます。
(質問)
答弁にもありましたように、引取りを判断する客観的な基準もない中で、職員はどのように引取り業務を遂行しているのでしょうか。動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の附帯決議には、所有者不明の犬猫の引取り拒否の要件設定に当たっては、狂犬病予防法との整合性、当該犬猫に飼い主がいる可能性及び地域猫活動等も考慮し、地域の実情に配慮した要件を設定することとあり、このように引取り拒否の要件の設定があるのならば、引取りを行う場合の要件も共に設定するのが公平で当然であるのではないでしょうか。対応した職員によっては判断や対応が違うなどの不公正な問題も起こさないためにも、これらの基準要件を早急にまとめることを強く要望いたします。
そして、手元にある資料では、猫ですよ。猫の母子ともに引き取られた猫たちのうち、母猫のみが殺処分されているのではないかと疑われる事案があります。しかも、収容されて数か月後に母猫が殺処分されている可能性を考えると、母猫に子猫を育てさせるだけ育てさせ、その後、無情にも母猫はその役目を終えたとのことで薬殺処分されたのではないかとの疑念を起こさせるものであります。本当にこのような非情なことが船橋市で実際に行われているとしたら、極めて問題ではないでしょうか。動物愛護の観点からも、そのような事態は甚だ遺憾であり、未来を担う子供たちへの教育的観点からも許し難い行為であると非難されてもおかしくはないと確信するものであります。
そして、所有者のいない成猫の譲渡についてですが、令和元年度には12頭、令和2年度には23頭、3年度には39頭と増加しておりますが、民間ボランティアによる保護団体の大きな協力と努力があってこその数字だと思われます。民間の保護団体は善意の寄附から運営されており、資金難にあえいでいる団体も多く見受けられます。資金難や飼育者不足、そして抱えてしまった猫の多さにより、団体による多頭飼育崩壊も起きています。それらの善意の保護団体の運営を逼迫させることを避けるためにも、安易な引取りは行わないよう強く要望いたします。
次に、手元にある資料では、ある地域の一部の複数の同一住民からの引取りが突出して多いことがうかがえます。その住民からの引取り申請の多さには驚くばかりですが、それを安易に引き受けている動物愛護センターの在り方にも大いに疑問を感じます。
一例として、ある地域では特定の同一人物からの引取り申請が少なくとも3年間の間に20頭もあり、猫の捕獲を専らとするリピーターの存在が疑われ、この異常とも言える事態に対してセンターがどのような対応を講じてきたのかもお答えください。また、殺処分に対する今後の考え方も併せてお伺いします。
さらに、動物愛護指導センターは、引取り申請者からの聞き取りを行う以外何も行わないのであれば、安易に引取りに応じるように思われても仕方がないと思えるお答えであったと思います。それで市民は納得するでしょうか。
重ねて申し上げますが、安易な引取りは動物愛護の精神に反しているだけでなく、単に殺処分の助長につながるだけであり、さらには動物愛護法の理念に明確に反する行為であり、動物行政の当事者としての不作為であると疑わざるを得ないものであります。苦情現場の調査と検証、周辺住民への地域猫活動やTNR活動の啓発の実施、それらを職員のあるべき共通認識として、その地域の所有者不明の猫の問題の解決を図るためや職員間の事務引継のための作業のためにも、透明性のある記録帳簿を残すことを強く申入れいたします。
さて、読売新聞2022年7月15日の記事には、千葉市が2015年度から7年間連続、犬猫の殺処分数がゼロを継続しているとありました。お手元の資料、もしくはタブレットをご覧ください。
千葉県も原則引取りはしないとし、柏市も所有者不明の猫の引取りは一切しないと明言しております。何ゆえ船橋市は殺処分に固執するのでしょうか。本市のみが不名誉な殺処分を継続することは、取りも直さず、多くの善意の船橋市民の顔に泥を塗っているのと同じことでありますので、即刻中止を求めるものであります。
(答弁)保健所理事
お答えいたします。
個別の事例については個人の特定につながるため、詳細はお答えできませんが、特定の地域から複数の猫の引取りの申請がある事例は、多数の猫が繁殖して増え続けており、相談者宅の花壇等へのふん尿被害や畑を荒らすなどの生活環境が損なわれている事態が生じてることを聴取しているものでございます。このようなケースでは周辺地域で猫の繁殖につながる給餌を行っている方がいる可能性があります。給餌者が特定できれば状況を伺い、必要に応じて不妊手術の案内や周辺に迷惑とならない管理を指導することで生活環境の被害を減らし、結果として引取りを減らすことにつなげられる可能性があると考えられるため、引取りを求めている方にできるだけ詳細にお話を伺って、給餌者特定に努めております。
しかし、給餌者の特定に至らず、給餌者への働きかけができないことも多く、真に困っている市民から法に基づき猫の引取りを求められた場合に引取りに応じております。なお、収容した猫につきましては新しい飼い主への譲渡に努めております。
また、先番議員にもご答弁いたしましたとおり、今後も動物愛護指導センターとしては関係部局と協力しながら、また、地域住民やボランティアなど多方面の協力を得ながらガイドラインの普及に一層努め、条例に目的として掲げている人と動物の調和の取れた共生社会の実現を目指す過程において、殺処分の必要がない社会の実現を同時に目指してまいります。
以上でございます。
(川井)
繰り返しになりますが、本市の現在の対応は時流に全く逆行するものであり、千葉市や柏市に続き、名誉ある殺処分ゼロの健全な自治体として、この船橋がこれからなることを心から祈念し、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。